真紅の空
「大丈夫ですか?」
「だ・・・いじょうぶ・・・」
気付くとあたしは無意識に唇をかみしめてた。
則暁くんがそっとあたしの手に触れた。
「そんなに、気を病むことはありません。
私はこれでいいと思っているのですから」
「でも・・・っ」
「いいのです。こうして暁斉様のお傍で
ずっと仕事をできるのなら、本望です」
「そんなっ!!
だって、こんなの不公平よ!!」
「・・・これが、私たちの国のやり方なのです」
凛とした則暁くんの背筋があまりにも立派過ぎて、
なんだかあたしが悲しくなった。
それがどうしてかはわからないけど・・・。
「由紀・・・殿??」
「・・・暁斉」
「え?」
「あいつの、暁斉っていうのも、偽名だってことよね?」
「・・・・はい。その通りです」
突然あたしが聞いたから、則暁くんは少し動揺した声をあげた。
それでもすぐに、冷静にあたしに応える。
あたしは顔を上げて続けた。
「じゃあ教えて。あいつの本当の名前は何?」
「・・・・・・暁斉様の、本当の名は・・・・」
「則暁!!」
門のほうから、綺麗な低い声が飛んできた。