真紅の空
あたしがぼーっとしていると、
仁が心配そうにあたしを見た。
「大丈夫か?なんか疲れてる?
今日は早く帰ったほうが・・・」
「いいの、大丈夫。
あたしちょっと図書室に用があるから・・・」
「・・・ほんと大丈夫かよ。俺、日誌書いてっから、
終わったらそっち行くよ」
「え?」
「一緒帰ろうぜ」
「う、うん。わかった・・・」
「よし。じゃあ、また後でな」
「うん・・・・」
仁の笑顔に胸が痛む。
あたしは耐えられなくて、何故か泣きそうで。
踵を返すと急いで教室を飛び出した。
*
夕暮れの誰もいない図書室は不気味で。
夢中で走ったときは気付かなかったけど、
このひっそりとした空間があたしは嫌い。
ゆっくりと本棚へ近付き、
歴史関連のスペースの前で止まった。
「戦国・・・・」
さっきも今も、そっと呟いたのは戦国時代。
自然とのびたその手は、一冊の本を手にしていた。
他と比べるとものすごく古くて、
ところどころ破けそうだった。
その場でぱらっとページをめくると、
また、あの声が聞こえた。