罪の果汁は甘い毒 完
――嗚呼、そういえば。林檎はアダムとイヴが手を出してしまった、禁断の罪の実だったか。罪に終わりを告げるこの日にそれを食べるだなんて、なんて洒落た偶然だろう。
半ば泣きそうになりながらもそれを堪え、もう一度彼に深いキスをした。舌を絡め合い、唾液がどちらのものなのかも判らないくらいに交わらせながら、彼女は頭のどこかで思う。
(さっき食べた林檎の果汁が毒になって)
――キスを通して私や彼の身体に回り、2人で死んでしまえたなら良かったのに。
その願望(ねがい)はきっと、最後まで伝えることが叶わなかった深い愛情が捻くれて、歪んでしまった末に生まれてしまったものなのだろう。