儚空--クライソラ--【完】
教室のドアを強く引く。
「ちょ。鮎川くん…!何して…。」
瞬間的に目をつむった。
そこに、見たくないものがあったからだと思う。
私は自分の弱々しい手で鮎川くんの服を握りしめる。
「おい、目を開けろよ。」
鮎川くんの言葉で目を開ける。
そこには、カラフルな何かがあった。
黒板に色とりどりのチョークで描かれた絵。
これ、私の絵かな?
女の子が笑ってる。
「ゆめ、退院おめでと!」
見慣れた可愛い丸字。
チョークでの、
たくさんのデコレーション。
教室にはさまざな動物のアートバルーン。
ハートの風船。
折り紙でつくられた輪っか。
大好きなみんな。
こゆ、はるちゃん、一条、信くん
そして、仁。
みんなが笑ってる。
隣の鮎川くんまで。
クラスのほとんどの人がいて、みーんな笑ってて…これ以上の幸せはないと思うな。
「「ゆめ、おかえり」」
一斉に私に向けられた優しい声。
心の底から感謝できる。
大好きな、仲間たち。
「「ただいま、みんな。」」