儚空--クライソラ--【完】
伝えたい
母さんが去年買ってくれたビーチサンダルは少し小さくなっていた。
バランスが崩れそうなサンダル。
それでも私は走ることを決めた。
私は走った。
走った。
少し走っただけで息切れがした。
昔はどれだけ走っても息切れしないくらいに体力があったはずなのに。
少し走ったら坂道。
坂道をくだる。
舗装されていない道だから、草がたくさん生えてて石もたくさん落ちてる。
ときどき転びそうになる。
下り坂だから、スピードがつく。
美しい海。
こんなところで青春時代を過ごせるんだね。
私は過ごせないかもしれない。
でも、みんなには ”未来” がある。
私が持っていないものを、みんなは当たり前のように持っている。
生きることを決めた今、それが羨ましくてしょうがなかったんだ。