儚空--クライソラ--【完】
いちかは栗色のさらさらの髪の毛。
まつ毛がながくてくりくりの瞳。
小顔で、スタイルも良かった。
まだ、抗がん剤治療を受けたことがないいちかは、優しい笑顔を浮かべていた。
「怖くない?抗がん剤治療。 」
「 そりゃあ怖いよ。
痛いんでしょ、苦しいんでしょ? 」
「 うん。なのにどうして、そんなに笑顔なの?笑ってるの? 」
「 それは、夢お姉ちゃんが笑ってるから!!苦しくても、夢お姉ちゃんが頑張ってるから、いちかも頑張る!
お互いがんばろ!」
いちかの顔を見て、泣きそうになったんだ。
でも、いちかには弱い部分は見せたくなかった。
無理にでも笑っていたかった。
いちかには言えないなぁ…。
治療が苦しくて、天国に逃げようとしたこと。
そっと…心の中にしまっておこう。