儚空--クライソラ--【完】
「 なぁ、夢。」
ちょっとトーンの低い仁の声を、私は見逃さなかった。
「 ん?どうしたの、仁。」
「 夢は、鮎川と付き合ったのか…?」
そうだった、仁は知らないんだ。
じゅんと付き合ったこと。
「うん…
一昨日から付き合ってるよ。」
なぜか、すごい緊張してる
「 そうか…。 」
ねぇ、仁。
なんでそんな悲しい顔をしているの?
仁の心の中に、私を思う気持ちが1ミリでもあるのかな…?
「仁は、誰かと付き合ってるの? 」
手が震える。
ドクンドクン…
近くにいる仁に、心臓の音が聞こえそうで、怖くて、私は胸に手を当てた。