儚空--クライソラ--【完】
7章
副作用
8月の初め。
そろそろ、体の中の抗がん剤が暴れ出すころ
「 うっ…おぇぇ…げほ…」
「ゆめっ!大丈夫…? 」
最近は、なるがお見舞いに来てくれるんだ。
吐き続けることしかできない私の背中をさすってくれる。
なるがいることで、私はどれだけ勇気づけられるか
「 水、飲む?」
私が頷くと、なるはゆっくり水を飲ませてくれる。
ありがとうね、なる。
「水って、こんなに甘かったっけ? 」
振り絞って出した声。
水が、甘く感じる。
「 え?」
なるは驚いた顔で私を見た。
私は、なるに顔を背けた。
味覚障害かなぁ…
これも、抗がん剤の副作用だね。
「夢? 」
心配そうななるの声。
「 ん?あ、何もないよ」
慌てて顔を上げると、なるが眉間にしわを寄せて「 大丈夫?」って言うんだ。
「大丈夫だよ!! 」
大丈夫なわけないじゃん…
私、苦しいんだよ。
食べたら、吐いちゃう。
ご飯を食べても、美味しくない。
でも、お腹が空く。
食欲はあるんだけど、食べる意味がわかんない。
気持ち悪いよ…