儚空--クライソラ--【完】
「 …っ!頭なんか下げんなよ。
顔上げてくれよ。
それは俺の出る幕じゃない。
夢と鳴海の問題だろ。
2人の問題は、2人だけのもの。
な?」
なるがゆっくりと顔を上げると、大粒の涙が落ちていく。
「ちがう…‼︎ ちがう!
あたしね…仁のこと好きだった。
いーっつもかっこいい仁が好きだったんだよ 」
首を少し振り、必死に喋るなるに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「知ってる。
知ってたよ。
幼馴染歴何年だと思ってんだよ…
でも、好きだった…って過去形だろ?
もう好きじゃないんだろ。
じゃあ、関係ないじゃん? 」
なるの涙は止まらなくて、コンクリートの上で崩れ落ちた。
涙がコンクリートに染みていく。
「 ありがとう…。」
なるがそう呟くと、
仁は、なるに手を差し伸べた。
「 ほらよ。 」
その手をただ見つめる、なる。
「いいの…? 」
「おう 」
仁の手に、なるがつかまり立つ。
「 ありがとう。 」
2人の関係はもうただの
”幼馴染”
なるは私の親友で、
仁は私の…
…って、私、まだ仁に告白されてない…
キス未遂はあったけど…
告白しないと。
人生2度目の告白。
それも、どちらも同じ人…
そのとき感じた。
もしかして、私と仁は
運命なんじゃないかな…って。