儚空--クライソラ--【完】
仁は私のそばに駆け寄ると、その温かい手で、私の手を包み込む。
「 夏だけど、結構冷えてるな。
今日、寒いし…。
どう、あったかい?」
まともに答えられないよ。
心臓の音がうるさすぎる…
もし、聞こえてたらどうしよう…。
「 あ…あったかいよ…暑いくらいなんだけど…」
車椅子を自分で引き、少し仁と距離をとる。
そんなとき、彼のポケットにメモ帳とペンが入っているのを見つけた。
「 紙とペンだ…!借りるね。」
真っ白い紙を取り出す。
仁に、伝えたいことがあるんだ。