儚空--クライソラ--【完】
千羽鶴
私は今も黙々と鶴を折り続ける。
昨日と同じように。
ただ、一つ違うのは…
「う…おぇっ…げほげほ 」
抗がん剤治療が始まったこと。
「 ゔっ…うう…っ 」
気持ち悪い…
何度も何度も吐く。
吐いては鶴を折り、また吐く。
20分かけて折った鶴が一羽だけ…
そんなこともあった。
「 夢、大丈夫か?」
仁がやってきた。
「 仁、気持ち悪いよ。
鶴、折れない…。」
「大丈夫だから。
俺が夢の分まで鶴折るから…
だから、夢は寝てろ。 」
「…っ。
やだ!私が折らなきゃ…
私の妹なんだもんっ…。 」
「 夢!」
仁は私を怒鳴った。
辺りが静まり返る。
「頼むから。なぁ、俺のお願い聞いてくれよ…な? 」
仁…。
必死な顔の仁を見て、私は何も言えなくなる。