儚空--クライソラ--【完】
医者は確かにああ言った。
「 絶対治しますから 」と。
俺は医者のためにどれだけ無駄なお金を使ったのだろう。
「 世の中に絶対はない」
それは、こういう意味なんだ。
幸せは儚い。
人の夢と書いて儚いとよむんだ。
俺が優奈と過ごした夢のような時間も本当に儚かった。
俺は優奈を亡くしな日から、
心の底から笑えない。
どうして優奈は笑えなかったのに、
俺は堂々と笑えるんだ?
あの日から、優奈の物も捨てられない。
優奈はまだ俺たちの心の中では
あんなに小さな子供としてまだ、生き続けてるのかもしれない。
あのチャイルドシートもその名残さ。
俺は優奈の死から、前を向けない
そんな状態で教師をしてきた。
俺は本当に最低な人間さ。
咲田。悪い。
お前が白血病の可能性があるんだって聞いた時、
俺はお前と優奈を重ねてしまった。
だから、頼む───。
何があっても死ぬな。 」