熟女に魅せられて
祐樹と陽子が帰った後も、剛彦は美央と一緒に競技に参加していた。 


『パン取り放題競争』

より多くのパンを口で銜え取った組が勝ち。


この競技は親子の協力と運動神経が必要となる。
そこで美央は剛彦に運動会へ来てくれるように誘ったのだ
。勝つためには母親より、男性である剛彦に頼んだ方が断然有利だからだ。


親子の親睦を図るために、今年から取り入れられたこの競技、
それなのに剛彦は芳美の代わりに、競技に出場することになった。


「頑張ってね、阪井くん」


「はい」


剛彦は芳美に見送られながら、
美央の小さな手をやさしく握り、
一緒に走る姿はまるで本当の親子のよう。


「剛彦くん、あれも!」


「はいよ」


美央は次から次へとパンの位置を示し、剛彦はそれを銜え取る。


まわりのお父さんの中でも一番若い剛彦は、
動きも機敏でより多くのパンをゲットした。


そして断トツの一位で、剛彦と美央は優勝。


「剛彦くん、やったぁー!」


美央はうれしさのあまり、思わず剛彦に飛び付く。


その勢いによろけながらも、しっかりと美央を受け止める剛彦。


「美央ちゃんもよく頑張ったな」


そう言って美央の頭をやさしく撫でると、美央は満面の笑みで、「うん」っと、答えた。


< 238 / 291 >

この作品をシェア

pagetop