夕焼け模様
隙間
彼に言われ先に戻って来た私はひとりソファに座っていた。
室内に響くのは壁掛け時計の秒針の音だけで、その音に切なさを覚える。
「…あき…」
無意識に彼の渾名を呼んでしまい、自分の声で我に返る。そうしてまた自己嫌悪に陥った。
「あきは、私と一緒にいて楽しいのかな」
結婚してから今まで、彼はなんでもやってくれたし、私のことも気遣ってくれた。彼の気遣いがなかったら多分今私はいないだろう。
でも、だからといってそれが彼自身を蔑ろにしていい理由にはならない。
「…はぁ…」
何度目かわからない溜め息を吐き、朝の中身そのままのバスケットから焼き菓子を取り出した。