北十字学園探偵部
茜とはまだ話をしていない。
目も合わせてくれない。

増田は相変わらずうるさいが、私に近づかなかった。

すごく寂しかった。
自分がガラスのように透明になり、誰の目にも映っていないようだった。
近くに人は沢山いるのに。

雪見が時々電話をかけてきてくれた。
他愛もない話を沢山した。

彼は地区予選に勝ち、全国大会に出るといった。
もちろん応援したいと思った。

学校で寂しい思いをしていると話した。雪見には全部話している。隠し事はない。


「時間が解決するよ。氷がゆっくりと溶けるように。だからあと少し頑張れ。何事もきっとよくなって行くんだ。心配いらないよ」

雪見は私が産まれて始めて出会った紳士だった。会話の中で雪見は近づきすぎず、遠すぎず、といったスタンスで、話しているうちにだんだん心が落ち着いた。
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