北十字学園探偵部
「何をしにきた!」
のぞみが声を張り上げた。

松夫はひどい格好だった。
鼻血が出ていたし、制服はビリビリに破けていた。

「のぞみ。助けてくれ」

「今更何をいうんだ。出てゆけ」

「頼む」


…………。


「腕を見せろ、ケガは酷いのか?」

のぞみは松夫のワイシャツをやぶり、傷を見た。

そして、私は見た。
松夫の腕に肩から手首まで伸びた大きな傷を。

「くそ、傷がひどいじゃないか」
のぞみは救急箱から包帯を取り出した。

「悪かった」
松夫がか細い声でいった。

「黙ってろ」

「すまない」

「今になっていうな。俺はお前が権力に走った時にどんなにつらかったと思う?
お前についていかないと決めた時、どんなに苦しかったか!」

「やり直しがきかないのは分かってる。お前のいう通り、俺は権力を求めた。だが、お前を忘れなかった日はない」

「勝手をいうな!」

「ふ、確かに今更いっても仕方ないな。俺が選んだ道だ」

松夫はがくりと倒れた。

「おい!しっかりしろ!」
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