まんまと罠に、ハマりまして
─抱きしめてほしい


なんて。
どれくらい振りだろう?
でも。
もちろん、そんな事は言えなくて。


「起きられそうか?」
「あ、はい」
「じゃあ、送ってく」
「え?」


課長に言われ、時計を見ると。
もう1時をまわっていた。


「あ、大丈夫です。タクシーで帰れます」


明日も仕事。
これ以上、課長を煩わせるわけにはいかない、と、そう返すと。


「なに言ってる?ひとりでなんて帰せるわけないだろ」


ちょっときつめの口調。


「で、も…。ワイン…」
「大丈夫。もう抜けてる」


上司より、の、感じだろうか。


「…はい」


久しぶりに。
ちょっと怖い。
< 107 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop