まんまと罠に、ハマりまして
「前の職場の上司が、怖くて厳しい人で。引き抜きされて、ここに来るって決めた時。俺はそんな上司にはならないって、最初は思ってたんだ」
「え…?」
「え、だよな。でも。ほんと思ってて」
「嫌い、だったんですか?」
「や。嫌いではなかったけど。近寄り難かったから。そうはなりたくないなって」
運転しながらで、私と目が合う事はなかったけど。
その横顔。
とてもやわらかい表情をしていて。
「けど、退職する時。言われたんだ。俺みたいにはなりたくないって思ってるだろって」
「え?」
「やべー、見透かされてるって、ドキッとして。けど、はい、とも言えなくて」
課長はきっと、その上司だった人が好きだったんだろうな、思った。
あと。
動揺した課長の姿が、見てみたかったかも、とも。
「そんな俺に、なめられるなよって。潰されないよう、頑張れって」
「潰されないように?」
「そう。意味わかんないだろ?俺もその時は分からなかった。でも、送別会の時、先輩にその上司のこと色々聞いて。分かったんだ。その意味が。あえてそうしてたんだなって」
「あえて、ですか?」
「そう。あえて」
「え…?」
「え、だよな。でも。ほんと思ってて」
「嫌い、だったんですか?」
「や。嫌いではなかったけど。近寄り難かったから。そうはなりたくないなって」
運転しながらで、私と目が合う事はなかったけど。
その横顔。
とてもやわらかい表情をしていて。
「けど、退職する時。言われたんだ。俺みたいにはなりたくないって思ってるだろって」
「え?」
「やべー、見透かされてるって、ドキッとして。けど、はい、とも言えなくて」
課長はきっと、その上司だった人が好きだったんだろうな、思った。
あと。
動揺した課長の姿が、見てみたかったかも、とも。
「そんな俺に、なめられるなよって。潰されないよう、頑張れって」
「潰されないように?」
「そう。意味わかんないだろ?俺もその時は分からなかった。でも、送別会の時、先輩にその上司のこと色々聞いて。分かったんだ。その意味が。あえてそうしてたんだなって」
「あえて、ですか?」
「そう。あえて」