まんまと罠に、ハマりまして
「キュービックさん、いらっしゃいました」


それは私の。
単なる勘違いだった。


「わざわざお越しいただいて、ありがとうございます。上條です」
「こちらこそ、この度はよろしくお願い致します。原田です」


課長がキュービックさんと挨拶を済ませて、


「失礼致します」


私はお茶係。
さっとお茶を出して、邪魔にならないよう、


─パッと出なくちゃ


思った時だった。


「…翼?」


誰かに、名前を呼ばれた気がして。
しかも、下の名前。


─ん?


でも。
社内。

誰も、私を下の名前で呼ぶ人なんていなくて。
(もちろん、課長も!)


─気のせい、だよね?


顔を上げた時だった。





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