まんまと罠に、ハマりまして
「ダメならいいんだ。突然だし。日、改めてで」


もちろん、課長は圭くんが元カレだとは知らないけど。
(仮)とは言え、私はいま課長とつき合っていて。
その課長の前で、


─約束なんて!


と、いくら鈍い私でも、出来るわけもなく。
なのに。


「何か予定あるのか、渡来?」
「え?」


私の視線に気づいたのか。
課長と視線が重なって。


「久しぶりなんですよね、櫻井さん」
「えぇ。2年振り、でしょうか」
「お受けしたらどうだ、渡来?」


課長が私に、


「…え?」


"普通"に、微笑んだ。


「今日は定時であがるといい」


【上司】の、顔で。


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