まんまと罠に、ハマりまして

「何だか申し訳ありません。プライベートな誘いを、後押ししていただいて」
「ほんとだな、櫻井。上條さん、すみません」
「いえ。私は何も…」


瞬間。
なんだろう。


─ドクン…


妙な気持ちが、胸を過った。


「じゃあ。後で連絡するな、翼」
「う、ん…」
「では、これで失礼します」
「はい。ではまた」


─ドクン…


多分、今まで味わった事のない。
初めての感情。


「あの、課長」
「まさかこんな偶然があるとはな。おかげで、打ち合わせも和やかに進んだよ」
「あ、は、い。あの…」
「今日は定時だろう？仕事に戻った方がいいんじゃないか？」
「っ…」


鈍い私でも気づいた。
課長の、微妙な違和感。


「…はい…」