まんまと罠に、ハマりまして
確かに大学を卒業して、就職してからは。
会う回数もかなり減っていた。
でも、忙しいのは分かってたし。
それでも、時間をみつけて連絡は必ずしてくれてた。

おはよう、とか、おやすみ、とか。
一言だけの時もあったけど。
ちゃんと、圭くんの中に私はいるんだなって思えてた。

だから。
確かに、別れを切り出された時はショックだったけど。
責める必要なんて、どこにもなかった。


「別れを切り出した時。あの時ちゃんとした理由を言わなかったのは、既にもう。動き始めてたからなんだ」
「え?」
「もう、会社。辞めてたんだ」
「え、そう、なの?」
「ん…」
「それはかなり、びっくり…」
「だよな…。だから。あの時は、翼を巻き込みたくなくて。不安にさせたくなくて。別れを選んだ」
「不安って…」
「正直。自分の事に精一杯で、翼のことを考える余裕もなくなってたから…」
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