まんまと罠に、ハマりまして
でも。


「渡来っ!」


いつの間に私は走っていたんだろう?


「!」


後ろから、課長に肩を捕まれて。


「待って、くれって…」
「っ…」


課長の息が、少しあがっていた。


「追いつけて、よかった…」


その息づかいと、捕まれたその手の温もりで。


「課長…」


現実なんだと、ようやく少し、実感して。


「話を、させてくれないか?」
「でも…」
「このままで、帰したくないんだ」
「…課長…」
「頼む、渡来…」


昨日の私は、そういう日だったんだろうか。
圭くんもだったけど、それと同じくらい。
課長もすごく真剣な表情(カオ)をしていて。


なのに。

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