まんまと罠に、ハマりまして

ゆきのさんは、肩の力が抜けた私を見て、


「この間はごめんなさいね」


またやんわりと口元を緩めた。


「電話に出てくれないから、直接自宅に行くしかなくて」


─あ…


それを聞いて。
あの日の、課長の電話を思い出す。

何度か鳴ってたケータイ。
あえて、


─避けてる…？


私と一緒だったから、なのか。
それとも…。


「伝えて欲しいのはひと言だけなの」


直接でも、聞こうとしなかったゆきのさんの言葉。


「あなたのせいじゃないから…って」
「…えっ？」
「あなたは何も悪くないって。それだけ、伝えて欲しくて」
「…………」


課長のせいじゃない。


「こんな事、ごめんなさいね。気分悪いわよね」
「えっ、あ…、いいえ…」


それは。
何に対しての言葉なんだろう…？