まんまと罠に、ハマりまして
「やっぱり、何かあっただろ?」
「…ううん」
「仕事、大変なのか?」
「…ううん」
「翼」


どうしてだろう。
それはいつも、圭くんに言われてた言葉だった。
"翼は分かりやすい"って。
あの日、課長に言われたのが初めてじゃない。
なのに。
私は圭くんの事を、思い出しはしなかった。


「なんか、ダメだね」
「え?」
「私。進歩ないね、全然」
「進歩?」
「うん。2年も経ってるのに。相変わらず、圭くんに心配させてるなって」
「そうかな」
「え?」
「進歩って、成長って事だろ?」
「あ、うん…。圭くんはどんどん先を行ってるのにって思って」
「俺から見れば、翼もそうだと思うけどな」
「私が?」
「2年前とは違ってる」
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