まんまと罠に、ハマりまして
「…か、ちょう…」


ようやく。
声が出た。


『…課長、じゃないだろ?』


そんな、課長のいつもの言葉も…。


『取り敢えず、良かった。連絡もらえて…。時間かかって、悪かったな。渡来…』
「っ、いいえ。いいえ…」


上司じゃない。
仕事中とは違う、課長の声。
ほんとにもの凄く、久しぶり気がして。


「私の方こそ、すみません、でした…」


涙が、頬を伝った。


『渡来…』
「ほんとに、ごめんなさ、い…」
『…泣いてる、のか?』
「…いえ…」
『渡来?』
「大丈夫、です」
『ほんとか?』
「はい…。はい」
『渡来…』


課長の声が、温かく感じた。

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