まんまと罠に、ハマりまして
相変わらず。
どうしてこの人は、こういう事を、サラリと口にしてしまえるのか。


「…………」
『渡来?』


きっと。
普通に、何ともない表情(カオ)で。
口にしてる。


「じゃあ、お願い、します…」
『わかった。準備出来たら、連絡して』
「はい」
『待ってる』
「はい。じゃあ、後で」
『あぁ。じゃあ』


きっと。
ドキドキしてる私に、気づきもしてない。

でも。
やっと、


「課長に会える…」


その時。


『お風呂が沸きました』


聞こえてきて。


「!そうだった!」


余韻に浸る暇もなく、私は思い出す。
そう。
お風呂。
私はかなり、酷い顔をしていて。

目の腫れ。
顔のむくみ。


「キャーーーーー!」


と、直接声には出さないけど。
心ではかなりの音量で叫ぶ。

< 242 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop