まんまと罠に、ハマりまして
「もう一度、はっきり言う。確かにあの時、別れを選んだのは雪乃の為だ。俺が居なくなれば、全てが解決するだろうって。雪乃の妨げにはなりたくなかったから」


妨げ。

それが、何を意味しているのかは分からなかったけど。
ゆきのさんの、あの言葉の意味はそこにあるんだというのは、何となく、理解はできて。


「妨げになんてならないわ!私に戻って、千暁!」


そう、触れようとするゆきのさんを振り払うかの様に、課長は身を反らすと。


「戻れない。もう、雪乃に気持ちはない」


きっぱりと。
言い切った。


「いま俺が大切にしたいのは、渡来だけだ」


そう、私にも。


「課長…」
「ごめんな、渡来。何が起きてるのか分かってないだろうけど。ちゃんと全部、話すから」


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