まんまと罠に、ハマりまして
当たり前だけど。
それは、ほんとにふたりにしか分かり得ない事で。
でも…。


「仕事よりも、かちょ…上條さんの方が、ゆきのさんにとっては大事なんじゃないかって。考えはしなかったんですか?」


必死に課長を取り戻そうとしてたゆきのさん。
あんな姿を見てたら、違う幸せも考えていたんじゃないかと。
ゆきのさんの肩を持つわけじゃないけど。
もしかしたら、なんて、思ってしまう。


「それは無い」
「え?」
「無いんだ」


やけに強い断定。


「でも…」
「ほんとに。無かったんだ」


変な表現かもしれないけど。
ゆるがない自信があるかのような言い方。


「そう、なんですか…?」


さっきのゆきのさんを見てた限りでは、課長の思い込みじゃないんだろうか、思ってしまうけど。


「残念ながら…」


また、寂しそうに課長が苦笑する。


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