まんまと罠に、ハマりまして
「俺は。雪乃の何を見てきたんだろうな…」


諦めにも似た、課長の表情。


「上條さん…?」
「いや…。ごめん。独り言だ」


その表情(カオ)が、あまりにも切なくて。


「でも。これで良かったんだ。この選択は、正しかった」
「…ほんとに、そう思ってますか?」
「え?」
「ほんとは。後悔、してませんか?」


そう。


「ゆきのさんを手放してしまった事を」


訊かずにはいられなかった。


「渡来…」


そこで課長が、どんな返答をするのかとか。
否定か、肯定か。
そんな事を考える間もなく、衝動的に。
口にしていた。

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