まんまと罠に、ハマりまして
しかも。


「今日から、配布予定、ですよね?」


で。


「渡来が適任だろう?」


一瞬、


─あ…


ふと、課長の口角が上がって。


「すぐ向かってくれるか?」
「はい。わかりました」


思わず、満面の笑みで答えてしまった。

それは、その一瞬の課長が見せた表情のせいだったんだけど。
課長はそうは捉えなかったんだろう。


「…嬉しそうだな」


苦笑を浮かべると。


「頼むな」


そのサンプルを私に渡して、


「やっぱりそっちがいいんだな…」


そう。
呟いた。


「…え?」
「いや…。行ってきてくれ」


聞き違いなんかじゃなく。


「あ、はい…」


確かに。

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