まんまと罠に、ハマりまして
『…悪いな。こんな時間に』


私の裏返った声に、苦笑い混じりで課長が答える。
静かで、低く響く声。


「いえ…。全然、大丈夫です」


何だか少し、ドキッとした。
課長との電話は初めて。
妙に、声が近いような気がして…。
そのせい、なんだろうか。


「こんな時間まで、仕事だったんですか?」
『ちょっと飲まされて。少し前に戻ったとこ』


それとも。
こんな時間に、という、シチュエーションのせい?


『ってか。まだ敬語?』
「え?あ、えっと…」
『まぁ、仕方ないか』


課長の苦笑いにさえ。
ドキッとしてしまう。
また、苦笑いさせているのに…。

もしや。
ほろ酔いのせい…?
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