2番目の彼女。
 まずは教室に向かって、教室のある階に着いたところで良平と別れた。



 良平は左、わたしは右。



 ギュッと、肩にかけた鞄を強く握った。



 ……ああ、もう、すごく緊張する。



 せめて、良平も同じクラスにいてくれたら。



 教室に入るのは、楽なのに。



 そう思いながら、クラスに近づいていく。



 教室から聞こえる笑い声。



 …ああ、いいな。



 きっともう、友達が出来た人たちなんだろうな。



 良平といたときはまだ平気だったのに、1人になると一気に増える不安。



 …入りたくない。



 中学の時と同じには、なりたくない。



 ………中学3年生。



 わたしは、ずっと一人だった。



 ………中園さんも、とくに誰といるわけでもなかった。
 


 けれど、わたし達は全然違って。



 わたしは絶対に話が合わないからで、中園さんは自分の世界みたいなものを持っていた。



 だけど、怖い不陰気なんじゃなくて、何度か話しかけたときは、普通に笑顔で接してくれていた。



 うん。



 友達になってくれるかもしれない!



 どうにか教室に入って、中園さんのいる場所まで歩く。






 「なっ、かぞのさん、おはよう」
 「あっ、和南城さん。おはよう。また同じクラス、よろしくね」
 「うんっ、よろしくお願いしますっ」






 ああ、よかった。



 柔らかく微笑んでくれて、本当、よかった。



 これで、え、誰だっけコイツ的な顔されてたら――や、中園さんに限って、そんなこと無いと思うけれど、でももしもそんなことあったら、絶対に立ち直れなかった、わたし。






 「この高校、同じ中学の人少ないよね」
 「ちょっと、遠いから…なのかなぁ」 






 わたしが言うと、中園さんはあぁ、と頷く。






 「近くにもあるもんね、高校ならいっぱい」







 秀明と同じようなレベルの高校だって、うちの中学から徒歩10分くらいのところにある。



 そっちも勧められたけど……わたしは同じ中学の人が多い高校に行きたくなかった。



 大人しい人、つまらない人、そういう印象から抜けたかった。

 




 「でもよかった、和南城さんが同じクラスで」
 「え?」
 「ほら、わたし、中学でも一人だったでしょ?自分から話しかけられないんだ」






 ………わぉ。



 あの、わたしとしては最高に憧れていた中園さん。



 ………ちょっと、わたしと似てる。






 「わたしも同じ」






 エヘヘ、と笑って言ってみる。



 …あ。



 今、ほっとした顔、した。



 これは、仲良くなれる、気がする。
 
 




 「ねぇ、中園さんのこと、名前で呼んでもいい?」
 「うんっ。和南城さんのことも、名前でいいかな?」
 「うんっ。初菜でもハナでも、好きなように呼んでください」






 名前で呼ぶって、なんとなく…仲良くなれるような気がして、嬉しい。






 「じゃ、梨咲って呼ぶね」
 「うん。わたしも初菜って、呼ぶね」






 初菜。



 家族以外にそう呼んでもらうの、いつぶりだっけ?

 




 「1年間、よろしくです」
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