夜更けにチョコレート
思った通り。
いや、思った以上に驚いた顔。
リョウは侵入者である俺に、本気で飛び掛かってくる。俺の右手に握り締めたモノを見たから尚更に抵抗は激しい。
いくら鍛えた体とはいえ、俺に反撃しようだなんて無駄な足掻き。
俺を誰だと思ってる?
敵う相手じゃないことぐらい、お前だってわかっているだろ?
まあ、俺だとわかれば……だが。
俺だとわからなければ仕方あるまい。
無駄だということを教えてやろう。
だけど、安心しろよ。
ちゃんと加減してやるから。
顔に傷なんて作ったら、彼女が悲しむだろ?
下の階の花屋は既に閉店している。隣は空き家、角部屋だから反対側の隣の心配は無用。上の階に住人がいるのかは知らないが。
俺たちが争っていても、気づかれることはないだろう。
少しだけ、本気を出してやろうか。
ひと息吸い込んで、力を込めた。