夜更けにチョコレート
「シュン! やめろ」
顔を沈めていく先は、リョウの首。
ねっとりと首を伝う液体に、唇を寄せていく。
触れる寸前で、動きを止めた。
鼻先には、チョコレートの香り。
頭上から聴こえてくるリョウの荒く上がった息遣い。胸の鼓動が速くなっているのが、はっきりと感じられる。
面白過ぎるだろ。
澄ました顔で彼女と歩いてたリョウが、必死になってるんだから。
ただひとつ残念なのは、お前がどんな顔をしていたのか見えなかったこと。
リョウの腕を押さえる手に力を込めた。今にも鼻先が触れそうな距離で、ふうっと息を吹きかける。リョウの体が、ぴくりと跳ねる。
「シュン、悪ふざけもほどほどにしろよ……」
相当怖かったらしい。
リョウの声が震えている。
いや、もしかすると怒っているのかもしれない。
体を起こし掛けた俺を跳ね除けて、リョウが起き上がった。頬と首を拭った手の匂いを嗅いで、顔をしかめる。