夜更けにチョコレート


「これ、チョコレート? 何してくれるんだよ、ジャケットの襟が汚れただろ? 床にまで付いてる……」



口を尖らせて、俺を睨む。
さっき俺を敵だと思って睨んだ時とは違って、子供みたいな顔をして。



お前のため、拳銃のオモチャに弾の代わりにチョコレートを仕込んでやったんだ。チョコレートを溶かすのは面倒だったが。



「チョコレート大好きなお前のためのサプライズだ、楽しかっただろ?」


「全然、楽しくない」



即答して、リョウは洗面所へと向かう。俺という客人を置き去りに。



リョウを待っている間に、顔の変装を外して汚れた床を拭く。拭き取ったチョコレートの香りに、むせかえりそうになる。



どうして俺が、こんなことを……
と思いつつも楽しませてもらえたのだから良しとしようか。



リョウの顔を思い出したら、笑いそうになる。




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