夜更けにチョコレート
やがて、風呂から上がってきたリョウは思ったとおりのふくれっ面。
「シュンが後をつけてたのはわかってたけど、顔見た時はマジで焦った。声聴いたらシュンだってわかったけど……」
と言って、濡れた髪をタオルで擦りながら俺を睨む。ソファに足を投げ出して座っている俺が手招きすると、ふいっと顔を背けた。
可愛げのないヤツめ。
また痛い目に遭いたいか?
それとも……
「そんなに怒るなよ……、今年もチョコレート風呂の方がよかったのか?」
「バカっ、あれは絶対にやめろ。後始末が大変だったんだからな、絶対にやめてくれ」
リョウが焦ってる。
そんなこと言われたら、してほしいの? と思ってしまうじゃないか。
去年のバレンタインデー。
このマンションではなく、リョウが前に住んでいたマンションで。俺はこっそり浴槽に、チョコレートを溶かし入れておいた。
そして帰ってきたリョウを待ち伏せして、浴槽に沈めてやったのだ。チョコレートフォンデュな気分を味合わせてやるために。
もちろん、リョウのため。
あれはあれで楽しかったが、確かに後始末が大変だったなあ。