夜更けにチョコレート
アイツは気づいてる。
俺が、ここにいることを。
お前は、怖がっているんだろ?
平然と装っているようだが、俺は知っている。常に耳をそばだてて、周りを窺っていることを。
何を怯えることがある?
お前の隣には、彼女が居るというのに?
彼女と歩調を合わせるアイツ。
ダウンジャケットの中に突っ込んだのと反対の手は、彼女の手を固く握り締めて。
何を話しているのか聴き取ることはできないが、彼女と顔を見合わせるアイツの顔には柔らかな笑み。
誰が見ても仲睦まじいカップル。
イライラしてきた。
妬いてるとか、そんな感情ではない。
ほんの少し……羨ましいだけ。
そして俺にも、こんな感情があったのかと気づかされてしまったことが悔しい。
もうひとつ、気づいたこと。
アイツは確かに変わった。彼女と出会い、付き合い始めたアイツは昔とは違う。
もはやアイツは、俺の知ってるアイツじゃない。
アイツは、俺のターゲット。