夜更けにチョコレート
あと二時間も経たないうちに、日付は変わろうとしている。
住宅地を縫う通りには俺たちのほかに、人の姿は見られない。ここではないどこかから人の気配を感じられるのは、建ち並ぶ住宅からの灯りか。
通りの街灯と住宅の門灯のほのかな光を頼りに、俺たちは歩いている。先を行くのはアイツと彼女、少し離れた後ろには俺。
住宅が途切れて、ぽつんと小さな公園が現れた。アイツが彼女の手を引いて、車除けのポールをすり抜けていく。
常緑樹の茂る公園へと入っていった二人の目的など、考えなくてもすぐにわかる。二人が向かうのは、二つ三つある遊具でもベンチでもなく、公園の入り口横の木の陰へ。
どうせ、いつものこと。
ふたりの儀式だ。
こんな時間だが人目もあるだろうに、誰かに見られたら……と考えたりしないのか。この公園から数十メートル先には、彼女の家があるというのに。
まったく、大胆なことをする。
息を潜めて隠れているつもりだろうが、無駄なこと。
俺にはすべてお見通し。
隠し通せるはずないのだから。