夜更けにチョコレート


アイツは、とうに気づいてる。
俺が背後にいることを。



気づいているから、彼女と別れの儀式も落ち着いてできないらしい。



安心しなよ。
ふたりの邪魔をするつもりはないし、ここで仕留めるつもりもない。



お前に気づかれているからじゃない。



最愛の彼女に、血生臭い現場を見られたくはないだろ?
それに、こんなに寒い住宅地の中ではお前もかわいそうだ。



俺の、せめてもの情けだ。
彼女を家に送り届けた後、心置きなく仕留めてやるよ。



お前がひとりになってから。



ゆっくり儀式を済ませて、帰って来いよ。俺は先回りして、お前を出迎えてやるよ。



お前も、それを望んでいるだろ?



リョウ……




< 4 / 19 >

この作品をシェア

pagetop