夜更けにチョコレート
アイツは、とうに気づいてる。
俺が背後にいることを。
気づいているから、彼女と別れの儀式も落ち着いてできないらしい。
安心しなよ。
ふたりの邪魔をするつもりはないし、ここで仕留めるつもりもない。
お前に気づかれているからじゃない。
最愛の彼女に、血生臭い現場を見られたくはないだろ?
それに、こんなに寒い住宅地の中ではお前もかわいそうだ。
俺の、せめてもの情けだ。
彼女を家に送り届けた後、心置きなく仕留めてやるよ。
お前がひとりになってから。
ゆっくり儀式を済ませて、帰って来いよ。俺は先回りして、お前を出迎えてやるよ。
お前も、それを望んでいるだろ?
リョウ……