【完】こいつ、俺のだから。
「じゃあ、まずは俺の下僕として彼女のフリをしてもらう」
「…………は?」
げ……下僕?
「どうせさっきの噂はすぐに学校で回るだろうし、そう簡単には撤回できないだろうから丁度いいだろ」
……噂?
え。私と佐野が付き合うとかいう、あのデマの噂がでまわるって?
あ、ギャグできた嬉しー、じゃなくて。
……それだけで付き合えと?
「無理」
ひとこと言うと、あたしは今度こそ佐野の手を振り払って歩き出した。
マジでありえない。
佐野と付き合うとか、嘘でもありえないし!しかも下僕ってなに?
そんなふざけたこと言い出す佐野も、どうかしてる。
本当になんだってんだ。
今日は厄日だ。悪夢だ。
そう思いながら、あたしはひとり、ズカズカと歩いていた。
「お前に拒否権ねぇんだよ」
そうつぶやいてる、佐野悠月の存在なんて知らずに。