【完】こいつ、俺のだから。
「なにそれ……早く言ってよ。
そんなに……そんなに佐野が漫才師になりたいんなら、あたし協力するに決まってるじゃん!」
「なんでそうなった」
佐野はあからさまに大きなため息を吐き、片手で顔全部を覆った。
それは羞恥心というよりかは、絶望というか、失望にも似ているように見てとれる。
「あれ、違った?」
あたしは首を傾げた。
佐野は手の隙間から、チラっとあたしを覗き見る。
そしてあたしの質問には答えず、まさかの質問で返してきた。
「……お前さ、楢崎のこと、好きなの?」
ポツリ、つぶやかれた声。
「は?」
一瞬で、時が止まった。