【完】こいつ、俺のだから。




「なにそれ……早く言ってよ。
そんなに……そんなに佐野が漫才師になりたいんなら、あたし協力するに決まってるじゃん!」



「なんでそうなった」




佐野はあからさまに大きなため息を吐き、片手で顔全部を覆った。



それは羞恥心というよりかは、絶望というか、失望にも似ているように見てとれる。




「あれ、違った?」



あたしは首を傾げた。



佐野は手の隙間から、チラっとあたしを覗き見る。



そしてあたしの質問には答えず、まさかの質問で返してきた。




「……お前さ、楢崎のこと、好きなの?」



ポツリ、つぶやかれた声。




「は?」



一瞬で、時が止まった。



< 104 / 418 >

この作品をシェア

pagetop