【完】こいつ、俺のだから。
あたしはふふっと、笑みをこぼした。
男の子に感動してくれたことが嬉しかったから、佐野が泣いてるの、見なかったことにしてあげよう。
「佐野、そのDVD貸してあげるから、ゆっくり見なよ」
「……お、おう。そうする」
ゴシゴシ目を拭いてる佐野を見てると、またひとりで映画見て泣くんだろうなぁって思った。
……よし。じゃあ、用も済んだし。
「帰るね」
「えっ」
あたしは立ち上がって、歩き出した。
「ちょっと……おい!」
すぐさま手首を掴まれる。
振り返ると、焦ってる佐野があたしを引き止めていた。
「なに?」
「帰るって、なんで?」
「え……だって、映画見たし」