【完】こいつ、俺のだから。
……お願いだから、教えてよ。
佐野はどうして、あたしを助けてくれたの?
どうして……。
「キスしようとしたの?」
腰に回した手を、キツくギュッと、抱きしめる。
1つの答えが欲しかった。
モヤが晴れないこの胸を、照らしてくれる夕日みたいな答えが。
だけどそんなの、かないっこない。
「バカかてめぇ」
容赦ないその声に、あたしは耳を傾ける。
バカって言うなとか、そんなことを言い返してる余裕はなかった。
「あれはキスしようとしたんじゃねぇ。お前の顔に、その……鼻毛がついてたからだな……!」
「…………」
「親切に取ってやろうと思ったんだよ!自惚れんなブス!」
――ブチン。
あたしの中で、何かが切れる音がした。