【完】こいつ、俺のだから。
振り返った佐野は、ちゃんとあたしの目を見て言い直した。
「別にお前のこと、嫌いじゃねぇ」
顔が熱くなっていくのがわかる。
その言葉に、冷静さというか、落ち着きというか、そんなものを取り戻したあたしは、無性に恥ずかしくなった。
「……う、嘘だ」
「あぁ?」
「迷惑だって、思ってるクセに」
「お前なぁ……」
佐野は呆れたように前を向いて、ため息混じりにつぶやいた。
「俺がお前のこと心底嫌いなら、そもそもこんな恋人ごっこなんてめんどくせーことしねーよ」
……なんで。
付き合うとき反吐が出そうなくらい嫌だって言ってたじゃん。
「それに、お前そこまで重くねぇし。
俺の脚力舐めんなよ?お前みたいな女ひとり、支えられねぇワケないだろ」
……嘘つけ。
重いっつったじゃん。肉落とせって。
「もし支えれなかったら、それは俺の力不足だ。悪かったよ怒らせて。
ほら謝った。謝ってやったぞ悠月様は。
だから最後まで送らせろ。ちょうどいいんだよお前の重さ。
その……体育祭の練習にもなるし」