【完】こいつ、俺のだから。
……意味わかんない。フォローになってないし、それ。
でも、それでも佐野は、珍しくあたしに謝ってきた。
「……ゆ、許してやる」
「ん。サンキュ」
別にいいって思えたんだ。
だって佐野が、ちゃんと礼を言ったから。
だって佐野が……あたしの重さ分もある自転車を、しっかりと漕いでくれてるから。
確かにムカついたけど、あたしの重さを否定しないでくれた。
あたしのこと、嫌いじゃないって言ってくれた。
もうそれだけで、許してやってもいいやって思えたんだ。
「佐野。あたしも怒ってごめん」
「はぁ?お前は謝ることしてねぇだろ」
……だけど、謝りたいって思ったんだよ。
そこからはお互い無言だったけど、全然気まずいと思うことはなくて。
自分の家までの道のりが、なぜかとても短く感じた。