【完】こいつ、俺のだから。
一瞬驚いた顔をした佐野だけど、すぐにふっと笑ってあたしの頭に手を置いた。
心の準備をしてなかったあたしはびっくりだ。
だけど、ポンポンっと撫でるその手は優しくて心地いい。
「また送ってほしかったらいつでも言えよ。仕方ねぇから送ってやる。
じゃ、明後日の体育祭でな」
「……うん」
あたしの髪を名残惜しそうに手放しながら、佐野は今度こそ本当に、自転車を漕いで帰って行った。
……もうすぐ体育祭か。
そんなことを思いながら、佐野が見えなくなるまであたしはずっと、見送っていた。