【完】こいつ、俺のだから。
なんて、無理やり理由をこじつける。
でも実際にそうだ。
なにせあたしは、恋愛経験が少ない。
今までで付き合った人数は、たったのひとり。
一つ上の先輩だ。
まぁその先輩とも、なんか合わないっていうか、いろいろあって、ついこないだ別れたんだけどね。
「おい。なにボーッとしてんだよ」
佐野にそう言われハッとする。
「あ、ごめん。……って、なにそれ?」
「は?わかるだろ。手だよ」
そんなの見りゃわかる。
だから、なんでまた手を差し出してるんだ佐野は。
「早く取れよ。行くぞ」
「行かないよ」
即答してやった。
いや、教室までは行くけど、佐野と手を繋いでは行かないって意味だ。
すると佐野は、はぁっと息を吐き私の手を強引に掴むと、くるりと振り返り歩き出した。