【完】こいつ、俺のだから。
「……お願い、助けて……っ」
やっと弱音を吐ききると、佐野はまるで、子供をあやすみたいにあたしをなで続ける。
その手はやがて、ポンッと頭の上に乗っかった。
「まかせろや」
強く放たれたその言葉は、ずっと前から決心してるような、そんな力強い声だった。
「忘れさせてやるよ。この俺が」
揺るぎない何かを感じる。
強い意志と、貫き通すという信念。
リレーで負けたのに……
落ち込んでるのに……
足が痛いのに……
目の前が涙でぐしょぐしょなのに……
……最悪なのに。
どうしてこんなのにも、心の奥はあったかくて晴れやかなんだろう。
2個目のお願いは、あまりにも優しくて。
あたしの胸を締め付けるには、十分だった。
ぶっきらぼうなヒーローに、この日あたしは救われた。