【完】こいつ、俺のだから。
チラッと佐野の方を、伺った。
すると佐野は、耳にスマホをあてたまま、目を見開いてあたしを見ていたんだ。
予想外の出来事に、胸がドキッとする。
だけどその表情は一気に崩れ、笑みがこぼれた。
「ぶっ」
「……な、なんで笑うの!」
「いや……こんなに近いとお前の声がすぐ近くで聞こえるから、変だなって思って。
しかもお前、素直に礼なんて言うし」
「なっ……!あたしが礼を言っちゃ悪いっての!?」
「そうじゃねぇ。なんかいいなって思って」
「? なにが?」
「右からも左からもお前の声が聞こえるのって、すげー落ち着く」
耳もとで聞こえる声に、
隣から聞こえる声に、
あたしの胸はトクンと音をたてた。
佐野があたしと、同じ気持ちを言った。